『ステイホーム』


木地雅映子/作 ふるえるとり/絵 偕成社

2023年

新型コロナウィルスの流行で、小学校が休校になった5年生のるるこ。別にいじめられていたわけではないけれど、心底ほっとすると同時に、それが「不謹慎だ」とも、きちんと考えられる賢い女の子です。

両親が離婚し、母の実家を受け継ぎ住んでいる家は古く、小学生の女の子が一人で長期間留守番するには不向きです。でも、お母さんも会社に行かなくてはいけない。初日こそ会社の会議室で過ごしたるるこですが、翌日たまたま実家にやってきた伯母の聖子が、しばらく一緒に住んでくれることとなりました。家具職人の聖子とるるこは、古い家の中を片付け、リノベ―ションを始めます。


コロナウィルスのことが、まだよくわかっていなかった頃に実施された「ステイホーム」。学校が休校になり、混乱が生じました。でも、それでよかったと思ってしまったるるこは、学校という閉塞した環境に、ひどく生きづらさを感じていた子です。でも賢いので、母一人子一人の環境で、自分が「学校に行かない」などという状況は安易に許されない、ということもわかっている。うまくやりすごしていこうと思っています。両親は離婚していますが、母親はきちんとした会社に勤めていて、経済的な不安はありません。ただ、祖母が亡くなり、頑なな祖父が施設に入った後に残された古い家は、なかなか片付きませんでした。

そこへふいっとやって来たのが、若いころ祖父と仲たがいして家によりつかなかった伯母の聖子です。家具職人の自身の工房が倒産しそうな聖子は、しばらく同居して、家の中のことを担当することになりました。そこでるること2人、家じゅうの残された不用品を始末し、家を住みやすいようにリノベしていきます。

作者の木地さんは、傷ついた子どもの心を描く名人だと、あおぺんは思っています。その分、毎回覚悟して読むことにしているのですが、読後はいつも深く感動します。今回は、主人公が小学生なので、読みやすい作品にはなっていますが、それでも、学校という体制に疑問抱くるるこ、自己中心的で頑なな父と相いれない伯母の聖子、母の会社の同僚の姉が放棄した姉妹(ここはかなりツライです)とそれぞれが傷ついた心をかかえています。コロナ禍という時代を取り入れつつ、不変的な心の救済が描かれています。

あ、硬くなりましたが、古い家を自分の家としてリノベしていく様子は、とても楽しくわくわくして読めます。いまちょっと問題の、親の家の片づけという切り口もありますね。


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