『星の使者―ガリレオ・ガリレイ―』


ピーター・シス/文・絵 原田勝/訳 大川修/手がき字 徳間書店

1997年

何千年ものあいだ、ひとびとは、地球が宇宙の中心だと考えていました。太陽も月も星もみな、地球のまわりをまわっていると思っていたのです。

十六世紀のイタリアに、ガリレオは生まれました。ピサの大学に入り、二十五歳で数学の教授になります。ある時、遠くのものが大きく見える道具が発明されたことを知ったガリレオは、自分でも作ってみました。そしてそれを空に向けたのです。

くる日もくる日も観測し、みたことを「星界の報告」という本にまとめて出版しました。天の川は星のあつまりであること。太陽の黒点のこと。月の表面のこと。地球は宇宙の中心ではないこと。

聖書の教えにそむいたとして宗教裁判にかけられたガリレオは、有罪とされ、以後死ぬまで一歩も家から出られませんでした。


伝記絵本です。絵が実に美しい作品で、シンプルに描かれるガリレオの生涯とは別に、絵の脇にデザインされた手描き文字で解説が入れられています。その手描き文字は、時に円を描いたり波打ったりとその場面をさらに引き立てています。

特に印象的な場面は、裁判にかけられているガリレオの様子で、円形劇場のような場所の真ん中にぽつんと立つガリレオと、その周りを回る悪魔の使いたち、山のようにそそり立つ観覧席を埋め尽くす赤い僧服をまとった宗教者たちが描かれたページです。その圧倒的な威圧感は、小学生にも伝わるのではないかと思います。そして、その結果夜の闇の中、ぽつんと家に佇むガリレオ。ガリレオの孤独がひしひしと伝わります。

小学4年生に紹介してきましたが、ちょっと難しいかなあとは常々思っていました。ただ、内容の理解は難しくとも、話を聞いた上で、絵を見返してもらえれば伝わるものはあると思っています。

ですが、この本の美しさは、本当は大人向けなのかもしれません。それほどに、鑑賞にたえる絵本です。秋の夜長に、夜空を眺めるようにながめてください。


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